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筆者が読んだ本の読書日記。書評ではなく、著書の内容から、自らの体験や時代背景を読み解くことを目指します。筆者の備忘録でもあります。
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51604ZT05XL._SL500_AA240_.jpg河邑厚徳『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』2000年2月、NHK出版

10年前のアジア通貨危機のころ、ミヒャエル・エンデを追悼した『エンデの遺言』を読んで「減価するマネー」を知った。1900年代の初頭にドイツのシ ルビオ・ゲゼルが提唱したこのお金は世界大恐慌の直後、ドイツやオーストリアの一部で現実に導入され、流通が速いお金として注目された。

 ドイツ南東部の炭坑町、シュヴァーネンキルヘンという人口500人の町では小鉱山主のヘベッカーが「ヴェーラ」という自由通貨を発行して町を活性化し た。オーストリアのチロル地方のヴェルグルでは鉄道工夫のウンターグッゲンベルバーが町長に選出されると、「労働証明書」という「通貨」を発行し、大規模 な公共事業を起こして、この新紙幣で賃金を支払った。町の商店も新紙幣を歓迎した。

この紙幣の特徴はやはり「減価」するというものだった。毎月1%ずつ価値が下がる仕組みで、紙幣に12個のスタンプを押す升目があって、町が売り出すス タンプを貼らないと額面を維持できない。このスタンプ代は一種の税金であるが、住民はなるべくスタンプ代を支払う必要がないようにできるだけ早目に使おう とするから紙幣は驚異的なスピードで循環した。失業の町は瞬く間に活況を呈した。

1932年はゲゼル・マネーが初めて世界的に注目を集めるようになった年である。欧米の経済学者やメディアがこぞってオーストリアの小さな村を訪れ、 「減価」するマネーの威力を世界に伝えたという。残念なことに「労働証明書」はまもなくオーストリア通貨当局から疑似通貨として発行を禁止された。もちろ んヴェルグルは元の失業者の町に戻ってしまった。

経済の破綻は失業者の増価を招く。失業者の急増によって、革命が芽生えたり、全体主義の台頭を許したりしたことは歴史の教訓である。

現在、われわれが使っているお金は「増価」する通貨である。本来、通貨は物々交換の代わりに登場したもののはずだったが、利益の蓄積によって金貸し業が 勃興し、「金利」の概念を生む。マネー経済は「利」が「利」を生む経済である。何も生産しなくとも「富」が「富」を生む仕組みである。金持ちがますます金 持ちになる仕組みでもある。

マネー経済が破綻した昨今、欧米のメディアは再びゲゼルの「減価するマネー」に注目し始めている。ゲゼルマネーやドイツで起きている「キームガウアー」 に関する報道が出始めているのだ。日本のメディアはまだ関心を示していないが、国際平和協会はかねてから日本でのゲゼル研究の第一人者である森野榮一氏に 注目していた。(伴武澄)
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