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筆者が読んだ本の読書日記。書評ではなく、著書の内容から、自らの体験や時代背景を読み解くことを目指します。筆者の備忘録でもあります。
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fbe5eab3.jpg 千早耿一郎、龍泉寺由佳『無茶の芸 川喜田半泥子』(二玄社、2007月3月)

川喜田半泥子(1878-1963)という陶工が津にいた。土をこねて焼くことを生業としていた訳ではないから、正確にいうと陶工ではない。土をこねる芸術家だ。

それでも半泥子という名は茶をたしなむ人なら誰でも知っている。今では値の付かない作品もあるというのに、半泥子は作品をひとつも売ったことがない。自 分の茶会で使うのが目的で、あとは誰彼となくあげてしまうのだった。もらった人の多くは価値がわからなかったから、多くの作品がそのまま農家の押入れで死 蔵しているかもしれない。
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2c52a0a5.jpg童門 冬二『田中久重 明治維新を動かした天才技術者』
(集英社インターナショナル、2005年6月)

本のタイトル通りの天才が維新をはさんで日本に生きていた。本当に多岐にわたって維新期の日本には天才たちがいて、それぞれの領域で存分に活躍した。

新しい国家には足りないものばかりだった。徳川政権を倒せば、それで終わりではなかった。政治制度はもとより、教育、税制、暦、郵便、鉄道、土木、金融・・・・きりのないほどゼロから生み出さなければ、西欧に日本を乗っ取られかねなかった。
 谷川徹三『世界連邦の構想』(講談社、9c434637.jpg1977年1月10日)

いまどき、世界連邦などといったら「何を寝ぼけたこと」と言われそうだが、第二次大戦後、欧米や日本でまじめに実現を目指す勢力があった。シカゴ大学では世界連邦憲法草案までが発表され、世界国家の枠組みが考えられた。フランス、イタリアの憲法には「上部団体への主権の移譲」への言及があり、アメリカでも多くの上下院議員が世界連邦に賛成をしていた。

この構想は朝鮮戦争以降、急速に収縮して米ソの冷戦構造へと時代は移り変わる。
542f9264.jpg 園田義明『隠された皇室人脈』(講談社+α新書、2008年5月20日)

前著『最新アメリカの政治地図』(講談社現代新書)はアメリカの経済人脈を徹底的に調べ上げ、そのネットワークから政治力の源を探るという試みだった。今回の『隠された皇室人脈』は皇室のキリスト教人脈から戦後日本政治の中核に迫ろうとしている。

園田さんは「国際戦略コラム」と「萬晩報」で長期に渡り、国際関係論を中心に執筆してきた市井のサラリーマン。もちろん本名である。とにかく読書量が並大抵でない。前回の『最新アメリカ政治地図』の印税はほとんどが本代に消えたというから大変なものである。

ネット社会はこうした市井のサラリーマンを言論人に育て上げる機能を果たしてきた。素人のネット小説が出版界を潤す時代であるから、言論人を生んだとしても不思議でない。
686c421f.jpg 小川守正、上村多恵子『平生釟三郎 世界に通用する紳士たれ』
(甲南学園、2009年12月1日)

甲南学園の創始者としての伝記。実は東京海上火災を日本一の損保会社に育て上げた中興の祖であり、現在のコープこうべの前身である灘生協の設立にも尽力した。明治に生を得た代表的日本人の一人である。損保、協同組合、学校jとまったく違う3つの事業を経営したが、底流に流れている考えは「日本」であり「社会」なのだ。損保会社を経営しながら、どうしたら日本が西洋に追いつけるか、どうしたら貧困から日本を救い出せるか。互助と教育に軸足をおいた経営者が戦前の日本には多く存在していたのである。
3097f9c3.jpg仁藤治『岳麓漫歩 ひとつの庶民史』(タウン社、1979年10月1日)









0373057d.jpg 賀川豊彦『空中征服』(日本生協連、1981年1月10日)

大正11年に大阪日報に連載したものを同年12月に改造社から出版。出版した月だけでも11版を重ねた。『死線を越えて』がベストセラーになった2年後であるから、評判を呼んで当然だったのかもしれない。
この『空中征服』は、主人公が川の中の生き物と会話をしたり、空中都市が生まれたりするなど奇想天外、荒唐無稽に物語が進む。その点では涙や感動を誘う賀川文学とは軌を一にしていない。大阪の工場から排出するばい煙による大気汚染が限界を超えていたことの業を煮やした賀川豊彦市長が突然、煙筒廃止方針を打ち出し市議会を巻き込んだドタバタ劇が展開する。
公害という言葉さえない時代に大気汚染防止の必要性を指摘した先駆性は大したものだが、それよりも興味深いのは大正末期の日本で賀川豊彦扮する大阪市長が公務員事務の請負制を考え出し、それを実施に移すことである。
小説の中では、アメリカですでに「市政事務引受会社」というものがあることを紹介している。80年前の話である。はたして本当にあったかどうか分からないが、発想が実に現代的である。
51EgYQ94yUL._SL500_AA240_.jpg星田宏司『日本最初の喫茶店』(いなほ書房、2008年4月)

日本で最初の喫茶店は明治21年、東京・上野に誕生した「可否茶館」だった。
コーヒーを飲ませただけでなく、内外の雑誌や図書を店内において知識人のサロンを目指したそうなのだ。

オーナーは鄭永慶という人物で先祖は代々長崎の通詞だった。鄭というから中国系だが200年以上、日本にいたからもう日本人と言っていい。何を隠そう、鄭成功の弟の子孫というのだからびっくりした。

41vD7I3c1WL._SL500_AA240_.jpg逵日出典『八幡神と神仏習合』(講談社、2007年8月)

学生時代に大分の宇佐に行ったことがある。八幡神社の本家である宇佐八幡宮があることを知っていた。奈良時代、道鏡が天皇になろうとした事件があった。和気清麻呂が宇佐に派遣されて、神の神託をうかがったという。なぜ、宇佐なのだかは学校では教えてくれなかった。宇佐八幡宮にお参りしただけではそのヒントも得ることはなかった。

宇佐八幡宮はずっと頭の中で気掛かりな存在だった。新橋の本屋でこの本を見つけてすぐに買うことになったのは当然のことだった。
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プロフィール
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伴 武澄
年齢:
73
性別:
男性
誕生日:
1951/05/05
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賀川豊彦研究
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